ゆーたんのつぶやき

株式会社ノークリサーチにてIT関連のシニアアナリストとして活動しています。

JBoss買収と今後のライセンス体系の関連は?



Red HatによるJBossの買収は周知のことかと思います。
一見すると、両社ともオープンソースに付加価値をつけることを
収益源としている点で共通しているようにも見えますが、細かく
考えると付加価値のつけ方には違いがあるようにも感じます。


Red Hatの場合は「パッケージングによる利便性」が付加価値と
考えられます。Red Hatが提供しているパッケージングと同じ
レベルを自前で収集することは不可能ではないけれども、労力
やメンテナンスを考えるとRed Hatを購入する方が現実的です。
Red Hat独自の仕組みももちろんありますが、基本的には既存の
Linuxコンポーネントを使い易いようにパッケージングしている
わけで、Red HatLinuxそのものを開発しているわけではない
と捉えています。


一方のJBossにおいてはJEMSを構成するプロダクト群はJBoss
雇用された開発者達が作っているものが大半です。
同社は「プロフェッショナルオープンソース」を提唱していますが、
このオープンソースの開発元がJBoss自身であるという点はとても
重要なポイントだと考えています。


この違いはライセンス体系において特に顕著に現れてきます。
JEMSを構成するプロダクトは一部の例外を除いてはLGPL或いは
ASFを採用しています。ですので、JEMSを土台にしてプロダクト
やソリューションを開発する際の敷居が低くなります。
JEMSは上位の製品やソリューションに組み込まれるパターンも
少なくないと思うので、こうしたライセンス体系が合いますし
それがJBossの優位性の一つであると思っています。


Red Hatによる買収でこのライセンスに関連する考え方に変化が
生じるのかどうか?というのは今後注視していきたいポイント
の一つです。


実はこれに関連してはJBoss Transactionsについて気になる点
があります。WS-TransactionとWS-CAF両方に対応しているので
重宝しそうだなぁと思っていたのですが、JTS部分については
GPLを採用しています。(JTAは他のJEMSプロダクトと同様LGPL)
また、スライドを見るとJBoss AP5では標準として組み込まれる
と書かれています。となると、JBoss AP自身の中にGPLを採用
したモジュールが含まれるということになるのでしょうか?


もちろんオープンソースを利用する限り、依存モジュールの
ライセンスについてチェックするのは当たり前で、特にLinux
についてはその点に意識を払うことが不可欠です。とはいえ、
JEMSがJBoss自身の開発によるものであり、基本的にLGPL
採用しているというのはJBossの優勢の一つ(といった記述を
ニュースレターでのMarc Fleuryのコラムで読んだ覚えが..)
だと思っているので、できればそのあたりは現状を維持して
もらえることを個人的には望んでいます。