ゆーたんのつぶやき

株式会社ノークリサーチにてIT関連のシニアアナリストとして活動しています。

ダ・ヴィンチ展



上野で開催されている「レオナルド ダ・ヴィンチ 天才の実像」
を観にいってきました。今回「受胎告知」が来るということで、
行列は必至なので、開館時間の9:30に間に合うように早起き。
が、しかし、既に60分待ちの行列ができてました、甘かった...


ゆっくりと本を読みながら一時間とちょっと待って、ようやく
「受胎告知」とご対面....とにかく「緻密」の一言に尽きます。
天使ガブリエルの髪の毛、聖母マリアの服の折り目など、絵で
あそこまで表現できるのもなのかと驚くばかりでした。


ですが、今回のボクの目的は「受胎告知」を観ることではなく、
自然科学者的な視点を持っていたダ・ヴィンチのモノの見方を
追体験してみたいというものでした。


ダ・ヴィンチは自然現象の中でも特にモノの動きや相互作用に
関心を持っていたようです。それらの多くを線形数学の観点で
探求し、体系化しようとしていたことが読み取れます。弓矢の
形と放つ矢の強度の関連を比例関係として説明したりといった
ところにもそれが垣間見られます。芸術の観点でも、対象性や
完全性を重視していたようなので (正多面体の考察やノートに
残った様々な幾何学模様からそう感じました) 比例関係で説明
できることが一番望ましかったのかも知れません。枝分かれを
した各々の枝の太さの合計は元になっている幹の太さに等しい
という考察も線形的にモノを捉えるダ・ヴィンチのスタイルを
よく表しているように感じます。


その一方で、水や空気の流れに着目し、それを人間の髪の毛の
描写に活かすなど、非線形の世界にも少し足を踏み入れていた
ようです。とはいえ、当時は非線形数学が登場する遥か以前の
時代。ポワンカレが今で言うところのストレンジアトラクタ
発見したのが1800年代末ですから、非線形現象にメスを入れる
のはちょっと無理だったでしょう。


ちなみにポワンカレはボクが最も尊敬する数学者。位相幾何学
の基礎を築いてポワンカレ予想を残したり、いわゆるカオスで
いうところの初期値敏感性に言及したりといったように、後の
時代で重要なトピックとなる事柄を鋭い洞察力で既にあの時代
にズバリと言っているところがとにかく凄いです。


もしも、ダ・ヴィンチとポワンカレが出会っていたら。。。。とふと
思いました。ストレンジアトラクタの持つ自己相似性、そして
その自己相似が自然界の樹木にも見られることをダ・ヴィンチ
が知ったとしたら、描かれる絵はまた違ったものになったかも
知れません。


ダ・ヴィンチが線形の枠を超えて、非線形で現象を読み解く方法
を得ていたとしたら、今日観た「受胎告知」はどう変わっていた
のだろう....そんなことを勝手に空想しながら帰途に着きました。