WebBCNのSMB向けストレージ市場特集にて
コメントを掲載いただきました。
http://www.computernews.com/NonWeekly/811/20081127NonMemSpecialReport.htm
今年に入ってから、大手ベンダから100万円
を切るiSCSI対応ストレージが相次いで投入
されています。
Dellの「PowerVault MD3000i」
HPの「StorageWorks All-In-One」
NECの「iStorage E1」
EMCの「CLARiX AX100i」
などが代表例です。
(NECとEMCの二製品は両社の提携によるもの)
iSCSI以外のIP-SANのニーズとしては
・FCPを用いてバックアップサイトと運用サイトを
ポイントツーポイントでつなぐ
・iFCPを用いて、FC対応ストレージ機器を安価に
導入する
などが考えられます。ですが、FC-SANそのものが
価格面などの障壁から普及していない中堅・中小
企業ではこうしたニーズは少ないと思われます。
したがって、中堅・中小企業のIP-SANといえば、
iSCSIのことを指す場合がほとんどといって良い
でしょう。
中堅・中小企業においてもデータ量は日々増えており、
それを確実に管理したいというニーズも高まっています。
ところが、FC/IP-SANの訴求で通常言われている
・遠隔地へのバックアップによる事業継続性確保
・N/Wに負荷を与えないLANフリーバックアップ
といったメッセージは中堅・中小企業でもニーズ
はありますが、コストとの兼ね合いを考えると、
広く普及するとは現時点ではまだ言えない状況です。
そうなると、
「データを集約してセキュリティやバックアップ
もしっかりやるというだけならNASで十分では?」
という話にもなりかねません。
IP-SANとNASの相違点はいろいろありますが、最も
大きな違いはアクセスがファイル単位か、ブロック
単位か?ということではないかと考えています。
言い換えれば、NASで集約できるのはオフィス文書
などのファイルですが、IP-SANであれば業務アプリの
データベースを集約することができるということです。
中堅・中小企業でもサーバ統合に対しては高いニーズがあり、
数台という比較的少ない台数しかない企業でもサーバ統合を
検討しているのが実態です。
ブレードや仮想化が徐々に浸透してくれば、そうした企業が
今後業務アプリを稼動させるサーバを統合しようとする動き
が出てきます。そうした時にはブロック単位でのアクセスが
可能なIP-SANがストレージ集約の手段として注目されてくる
はずです。
ですので、中堅・中小企業にとってベストなシナリオは
『オフィス文書ファイルなどをNASに集約し、セキュリティ
強化やディスク容量効率の最適化を実施しつつ、将来の
サーバ&ストレージ統合(iSCSIが必要な統合)に備える』
ということになります。
このシナリオの観点ではNASとiSCSIの両方に対応している
HPの「StorageWorks All-In-One」などは特に有効な選択肢
といえるかも知れません。
いずれにしても中堅・中小企業のストレージ市場が過渡期に
差し掛かっていることは間違いありません。ベンダとユーザ
双方にとってプラスになる情報発信を行えるよう、この分野
についても今後力を入れていきます。