ゆーたんのつぶやき

株式会社ノークリサーチにてIT関連のシニアアナリストとして活動しています。

プライベートクラウドの誕生と変遷



ITmediaエンタープライズに「プライベートクラウドの誕生と変遷」
という記事を寄稿させていただきました。
http://www.itmedia.co.jp/enterprise/articles/0907/23/news002.html


クラウドやXaaSについては既存のシステム構築/運用手法を
覆すものという論調も少なくないですが、あくまで選択肢が
増えたに過ぎないと捉えています。


記事中にも書きましたように、プライベートクラウド
ユーザ企業が自社の管理下に置かれた情報処理システム
に対してクラウド関連技術を適用することで、柔軟かつ
迅速なシステム構築/運用を目指すものです。


ですが、リソースの共通化/共有化によるメリットを十分に
享受するためには全社規模ないしはグループ企業も含めた
広い範囲でのガバナンスの維持が欠かせません。サイト化
されたシステムが多い日本の企業、特に中堅・中小企業に
とってはその点のハードルは高いといえます。


そのため、しばらくはプライベートクラウドの活用はCIOが自社や
グループ全体のIT活用指針を力強く牽引できている一部の大企業
に留まると予測しています。


また、クラウドのメリットとして「変化に強いアジャイルなシステムの構築」
が良く挙げられます。確かにCPU/メモリ/ストレージといった各種リソースの
観点では当てはまりますし、自社が必要とする業務の一部がサービスとして
提供されていれば、それを活用するという選択を検討する価値はあります。
しかし「ユーザの要件を把握し、それに応じた適切なシステムの構築や選定を行う」
というプロセスは無くなりませんし、それが自動化されるわけではないはずです。


クラウドがもたらすものは「システム構築/運用における新たな選択肢」
であって「既存のシステム構築/運用を代替するもの」ではありません。
選択肢が増えることによって、それを的確に取捨選択するSIerの役割も
高まると考えています。
この点はプライベートクラウドでも同様です。特に、プライベートクラウドでは
ユーザ企業側のITに対するガバナンスの維持が重要ポイントです。部署間
やグループ企業間のビジネスプロセス調整などを、SIerの力を借りながら
どれだけスムースに行えるか?が成否のカギを握るだろうと考えています。