ゆーたんのつぶやき

株式会社ノークリサーチにてIT関連のシニアアナリストとして活動しています。

VS.NET Team SystemのSoftware Factories



以前に触れたVisual Studio .NET Team Systemに包含されるWhitehorse
のCommunity Technology Preview(CTP)がリリースされました。前回記述
したようにUMLのプロファイルではなくDSLによってシステム構成を記述で
きるようになっています。このフレームワークの特徴は開発者が個々の案件
種別(ドメイン)に応じて独自のDSLをカスタマイズによって作成できる点で
す。実際にはシステム構成を記述するモデリング言語だけではなく、ツール
開発プロセスフレームワークの全ての要素について個々のドメインに応
じたカスタマイズが可能になっています。同社はこれをSoftware Factory
と呼んでいます。完全なフルセットでの提供はまだ数年先のようですが、既
Siemensなど数社が協調姿勢を示しており、主要なドメインに関しては
テンプレート的なセットが提供されるようです。これまでは開発者は独自の
システム構成記述、開発プロセスフレームワークを個々の案件ごとにバラ
バラに採用もしくは開発してきましたが、こうしたある種の雛型が充実して
くることによって、品質向上と工数削減が見込めるとのことです。


MDAが現実的でないとされる理由の一つに「全ての企業の全てのニーズを正
確に記述できる手法など存在しない」というものがあります。その主張は
確かにそのとおりで、標準のUMLが揃えるダイアグラムのみで全てを表現
することは不可能でしょう。ですが、プロファイルないしはDSLドメイン
ごとに用意することにすれば、実現の可能性が出てきます。Microsoft
そういったことをDSLによって実践しようとしているということかと思い
ます。


この試みが成功するためにはSoftware Factoryを開発者が手軽に利用で
きる土壌が必要です。VS.NET Team Systemが必要条件ということになっ
てしまうとちょっと敷居が高くなってしまいます。特定ドメイン向けの
テンプレートをカスタマイズすることなく利用するだけであれば、無償
に近い形で利用できるモデリングツールを用意した方が普及の度合いは
速まるのではないかと思います。その場合にはドメイン向けテンプレー
トを有償で提供するパートナーが登場してきて、新しいビジネスが生ま
れるかも知れませんね。