ゆーたんのつぶやき

株式会社ノークリサーチにてIT関連のシニアアナリストとして活動しています。

WBSと見積もり手法



最近はPM関連の話題がとても多く、見積もり手法に
関することが取り上げられる場面も良く目にします。


その中で「WBS」や「WBS見積もり」といった言葉が出てきますが、
人によって意図する中身が異なっているケースがあるようです。


PMBOKにおいてはWBSは「スコープ定義」プロセスの成果物であり、
個々の開発担当者の実作業項目よりもやや大きいレベルの
「ワークパッケージ」を単位とします。
開発担当者の実作業項目は「アクティビティ定義」プロセス
の成果物である「アクティビティリスト」に相当します。
文脈的には「アクティビティリスト」を指しているけれども
それを「WBS」と呼んでいるケースでは人によっては意図が
うまく伝わらない場合があります。


同じことが「WBS見積もり」という言葉においても言えます。
PMBOKには「WBS見積もり」という見積もり手法は明示的には
存在しません。PMBOKでは所要期間と実コストのそれぞれの
見積もりプロセスを区別しています。前者が「アクティビティ
所要期間見積もり」、後者が「コスト見積もり」です。
「アクティビティ所要期間見積もり」で用いられる手法は
・専門家の判断
・類推見積もり
定量ベース所要期間
・予備時間
「コスト見積もり」で用いられる手法は
・類推見積もり
・係数モデル
ボトムアップ見積もり
・コンピュータツール
・その他のコスト見積もり手法
となっています。
WBS見積もり」といった場合には所用期間見積もりとコスト見積もり
を一つのプロセスとしてまとめた上で、アクティビティリストに対する
類推見積もりとボトムアップ見積もりを混在させて行なうことを指して
いる場合が多いように感じます。「モジュール毎に工数を合算していき
過去作成したことのあるモジュールに近い機能は過去の実績を参考にし
て算出する」というパターンですね。
ところが、PMBOKでいうところの「類推見積もり」はモジュール単位で
行なうものではなく、プロジェクト単位で行なうものとされています。
つまり、過去の類似プロジェクトとの類似点を元にトップダウン的に
見積もり算出を行なうもので、ボトムアップ見積もりとは対照的な手法
とされています。このあたりも言葉の定義がややこしいところです。


ボトムアップ見積もり」と「モジュール単位の類推見積もり」を実施
している場合には手法がボトムアップのみになってしまうので、リスク
が生じます。こういった場合にはユースケースポイント法やファンクシ
ョンポイント法といった手法を用いて工数を算出し、ボトムアップ算出
の結果と比較して妥当性を検証するというパターンが一般的のようです。
これらの手法は「類推見積もり」ないしは「係数モデル」に相当するも
のといえるかと思いますが、ボトムアップのリスクを補うためのトップ
ダウン的なアプローチと捉えることができるかと考えています。


仕事ではファンクションポイント法による工数試算(トップダウン的手法)
とソースレベルの確認による合算工数試算(ボトムアップ的手法)の両方の
結果を出した上で最終的な工数を判断しています。


いずれにしても社内の開発チーム間や外注業者との間などで言葉
の定義をしっかりとあわせておくことが大切ではないかと思います。