ゆーたんのつぶやき

株式会社ノークリサーチにてIT関連のシニアアナリストとして活動しています。

30歳からの成長戦略



ここ最近話題になっている山本真司氏の「30歳からの成長戦略」
を読んでみました。今の自分にとって必要な本だなと心底痛感
しました。


ボクが特に勉強になったと感じるのは「第8章 論理と感情を併せのむ」
の部分です。論理的思考法は客観的で説得力もあるため、刃物のような
切れ味を発揮することがあります。ですが、科学的な分析手法を根拠と
することが災いして、それを使う側はそれが唯一絶対の真理であると思
い込んでしまい、他の視点からのアプローチを排斥してしまう行動を取
ってしまう危険があります。


当に自分が今ハマリかけてしまっている状況だと思い知らされました。


論理的な分析に基づく論理的思考法と対極に位置するのが直感的な全体
観察に基づく全体思考法です。「自動車メーカーの優れた組み立てライ
ンマネージャーは銀行窓口業務を一目見ただけで、どこに業務の流れを
滞らせている原因があるかを正しく指摘できる」という記述がそのアプ
ローチの特徴を端的に表しています。この全体思考法は論理的な根拠に
ついては不透明な部分がありますが、人間の感情的要素に訴えかけやす
いというメリットを持ちます。


この全体思考法を訓練するための「イメージアーカイブを充実させる」
という手法についても自分にとってはとても新鮮なものでした。


さらに斬新さを感じたのは、この両者の思考法を如何に両立させるか
という課題に対する答えである「レゾナンス思考法」でした。


例えばある問題を解決する解として、論理的思考法を得意とする社員
が、その思考法に基づいた案を出したとします。その案は当然ながら
論理的かつ分析的で、そのままでは皆は心情的に受け入れられません。
通常はそこで「そうは言っても人間は感情の生き物だから」というこ
とで「バランスのとれた中間点」を模索しようとする発言が出てきま
す。この本ではそれを「バランスの罠」として警告しています。確か
にこうした発言は良くみられます。中間的なスタンスを取った段階で
何となくその場をうまく調整できたような満足感が漂いますが、実際
には実効力のある解決策は提示されないままになっていることが多い
ように感じます。この「バランスの罠」にはまっていることが自覚で
きないと、「低価格路線を保ちつつ、差別的な製品を投入する」とい
う相矛盾した戦略を抱き合わせるようなことになってしまいます。


ではどうすれば良いかというと、論理思考と全体思考の双方の存在を
確認した上で(「着眼両極」)、それぞれの思考法を個別に検討しなが
ら、両者の間を行ききしながら醸成していく(「着手単極」)という方
法を取るべきである(「レゾナンス思考」)とこの本では書かれていま
す。この「バランスの罠」と「レゾナンス思考」の違いはわかりにく
いため、(本の中ではわかりやすく書かれています)論理的思考法を得
意とする人材がバランス思考を重んじる上司の影響によって、自分も
またバランス思考になってしまうという連鎖が起こりやすいと言えま
す。結果として、中途半端な折衷案や二番煎じばかりで、「尖った戦
略」を打ち出せない会社になる(「着手両極」の過ち)というパターン
が少なくないのではないかと感じています。


自分としてもここ最近の自分の論理的思考に偏った言動の反省から、
自己の発言スタイルを変えなければならないと考えていたのですが
ともすると「バランスの罠」に陥りかけていたようにも感じます。
今のタイミングでこの本に巡り会えたことは、かなりの幸運だと感
謝しています。


論理思考法の会得もまだまだ不完全であり、全体思考法については
全くできていない状況ではありますが、気持ちを新たにして、この
本で述べられている「実力派天邪鬼」となれるように日々研鑚を積
んでいきたいと思います。