ゆーたんのつぶやき

株式会社ノークリサーチにてIT関連のシニアアナリストとして活動しています。

SOAとSaaSとマッシュアップ



SaaSマッシュアップによってSOAの重要性が再認識されているのを感じます。
従来のSOAは企業内という範囲を対象として、ミドルウェアの言葉で語られてきた
ように感じます。そのためにユーザーが理解している業務単位としての「サービス」
と技術的な観点での「サービス」の摺り合わせが困難となり、そのことがSOAを実感
のない技術用語としてしまっていたのではないでしょうか。


その一方で、Google Mapsなどによる視覚的なマッシュアップによってユーザーにも
わかり易い「目に見えるサービス連携」が実現可能となりました。それに続いてSaaS
における業務アプリケーション間のマッシュアップ事例が登場し、「視覚的マッシュ
アップ」だけでなく、インターネット越しのデータ連携ともいえる「非視覚的マッシュ
アップ」も行われるようになってきました。このように不特定多数に公開されたWeb2.0
的サービスのマッシュアップだけでなく、社内外の業務アプリケーションをマッシュ
アップによって連携させようという動きが「エンタープライズマッシュアップ」である
と理解しています。


そう考えると、エンタープライズマッシュアップSOAの対象範囲を企業外に広げ、
ユーザーによってわかり易い具体的なサービスの単位を具現化したものと言えます。
今後、重要なデータを扱う非視覚的マッシュアップが増えてくれば、例外発生時に
どこへデータを流すか?などといった高度な連携フローに対応できる土台が必要と
なってくるはずです。したがって、SOAプラットフォームはマッシュアッププラット
フォームやSaaSプラットフォームが持つべき本質の一つに他ならないことになります。


実際、オンデマンドERPを提供するWorkdayが今年二月にESBベンダー
のCapeClearを買収した動きなどはこのことを如実に表しています。


Salesforce.comやNetSuiteといった専業SaaSベンダーはもちろん、SAPやOracleといった
既存大手ベンダーもSaaSマッシュアップの基盤としてのSOAプラットフォームの提供に
力を注いできています。


ここで問題になるのは「何処でマッシュアップをするか?」ということです。


選択肢としては


1. SaaSベンダーに任せる
 salesforce.comのAppExchange
 NetSuiteのSuiteFlex/NS-BOS
 SAPのBusiness By Design


2. 自社内配置を基本とする
 OracleのAIA(Application Integration Architecture)


の二つが考えられます。


機密の高いデータを自社内のアプリケーション間でやりとりするのであれば、
現時点では2.のアプローチが無難かも知れません。SaaSとしてアウトソース
する業務割合の変化に応じて1と2を行き来することのできるハイブリッドな
アプローチができればそれがベストでしょう。
NetWeaverをベースとしたBusiness By Designにはその可能性が十分にあると
いえるかと思います。


さらに3つ目の選択肢として


3. クライアント側でマッシュアップする


というものが考えられます。


個々のPCにインストールを要する専用クライアントアプリケーションでは
運用管理コストの点で問題ですが、昨今のリッチクライアント技術ならば
マッシュアッププラットフォームとするだけの機能は備えてきています。


代表例としては
  EclipseRCP + JavaWebStart(Lotus Expeditorなどで採用)
  Adobe AIR
  Microsoft WCF/WPF + ClickOnce
といったものが挙げられます。これらはいずれも専用クライアントアプリ
並みの機能を持ちながら、アプリケーションをWeb経由で配信できますし、
クロスドメインの制約も克服することができます。その分、セキュリティ
に対する配慮が重要ですが、第三のマッシュアッププラットフォーム候補
として今後注目が集まるのではないかと予想しています。