ゆーたんのつぶやき

株式会社ノークリサーチにてIT関連のシニアアナリストとして活動しています。

新会社法に関する一視点



来年4月に施行予定の新会社法は新規企業とM&Aを活発化
させるものとして取り上げられることが多いですが、株
主権限が強くなることも見逃せないポイントです。


その中でも顕著なのが取締役の解任決議に関する変更で
す。現在は取締役の選任は普通決議 (過半数の賛成が必
要)である一方、解任は特別決議(3分の2以上の賛成) と
なっています。ですが、新会社法施行後は解任決議も普
通決議となります。つまり、経営者の力不足などによっ
て業績が伸びない場合、株主が経営者の交代を要求する
という場面が今後は増える可能性があります。


上場・公開企業であれば自社株取得などによって、持ち
株比率を高く保つことで安定を図ることができますが、
上場前のベンチャー企業でオーナー経営者である場合は
常に過半数の持ち株比率を維持しないといけなくなるの
で大変です。設立当初からIR戦略をきちんと考えて、主
要取引先やパートナーといった安定株主を確保していれ
ば良いのですが、そういった安定株主がほとんどなく、
大半がVCによる出資で占められているようなケースでは
上場が遅れたりすると経営者交代を迫られたりといった
ことが起きてくるかも知れません。やはり設立当初から
のしっかりとした投資先選択やIR戦略が重要なのだなと
あらためて感じます。


また、こうした状況下では新規ビジネスや新規事業の展
開のために増資をしようとした時に持ち株比率の維持が
大きな負担となってきます。こうしたことを回避するた
めの一つの方法として、新規ビジネスは子会社として早
期にスピンアウトさせて親会社のしがらみをなくしてお
くという対処も今後は出てくるかも知れないなと考えて
います。


ネガティブに捉えてしまうと保身をするための施策ばか
りに目が行ってしまいますが、株主への貢献がよりシビ
アに評価されると同時に、よりダイナミックな経営が求
められる環境になったと捉えれば、新会社法での変更事
項は活気のあるベンチャービジネスが生まれていく契機
にもなるのではないかと考えています。