ゆーたんのつぶやき

株式会社ノークリサーチにてIT関連のシニアアナリストとして活動しています。

ITアプリケーションの利用実態と評価レポート



10月後半はほぼ毎日のようにITアプリケーションの
シェア&評価のリリースを出していました。


http://www.norkresearch.co.jp/result/release.html
(グループウェア、文書管理、運用管理/資産管理、
DWH/BI、ワークフロー、クライアントPCセキュリティ、
帳票、人事管理、給与管理、販売管理/購買管理、
財務管理、生産管理、ERPの順に並んでいます)


例年、各カテゴリにおけるパッケージ製品の「利用社数
シェア」「利用予定社数シェア」「総合五段階評価」を
調査しています。今年はそれに加えて、現在利用中の
各アプリケーションにおける「パッケージ」「独自開発の
システム」「ASPまたはSaaS」の三つの形態比率をユーザ
に尋ねています。


ASPまたはSaaSの比率がどうなっているかが気になるところです。
結果は基幹系アプリケーションでは1%未満、情報系では2〜4%程度
となりました。2009年2月時点に実施したSaaSの活用状況調査では
利用中:3.6%
計画中:2.2%
検討中:6.5%
となっていましたので、この半年の間ではほとんど変化していない
ことになります。厳しい経済環境の中、ユーザも身動きがとれない
のは確かですが、少なくとも「コスト削減を目的として自社内運用
からSaaSへの転換が進む」という状況ではないようです。


では、SaaS活用が停滞したままなのか?というとそうでもありません。
ユーザ側としては「パッケージ」を利用していると認識していても、
実際はSaaSとほぼ同じようなことをやっているケースが多々あります。


「クライアントPCセキュリティ」のカテゴリではトレンドマイクロ
の「SPN(Smart Protection Network)」やシマンテックの「Quorum」
のようにインターネット上に置かれたパターンファイルへアクセス
してマッチングを行う形態が登場してきています。


「DWH/BI」ではExcelファイルをブラウザからアップロードすると、
使い勝手の良いGUIで分析可能な状態にしてくれるSAPの「Business
Objects Explorer in the Cloud」といったサービスも(まだベータ
ですが)あります。https://create.ondemand.com/explorer


「運用管理/資産管理」ではサイトロックの「Client Care / Log Care」
KDDIの「PCリモート管理サービス」のようなリモートでの管理/監視
サービスが増えていくと予想されます。


基幹系においても、奉行iシリーズで提供された「奉行iメニュー」
(自社のライセンスやサポート状況をオンラインで確認できる)や
OBCメッセージセンター」(法制度改定など、運用に役立つ情報を
提供してくれる)といった付加サービス提供による差別化も目立つ
ようになってきています。


これらはいずれも「手元に何らかのアプリケーションやモジュールがあり、
それを利用する」という点では従来のパッケージと大きく変わりません。
ですが、背後に「サービス」が存在することで、これまではローカルPCや
アナログで行っていた処理がより迅速かつ的確に行われるようになります。


「パッケージ」と「ASP/SaaS」をAll or Nothingの対立概念と捉えず、
それぞれの長所を引き出して融合させるという発想が重要ではないかと
考えています。


逆に言うと、ユーザ側から見れば「パッケージ」なのか「ASP/SaaS」なのか
の判断が難しくなってきます。(本来、そのようなことを全く気にせず利用
できるのが理想なので、その意味で良い方向に向かっていると言えますが)
調査をする立場からすれば、単に「パッケージですか、ASP/SaaSですか?」
という通り一遍の訊き方だけでは、正しい状況把握ができなくなっていくと
予想されます。


今回15種類に渡るアプリケーションの実態調査をする中で、やはり「ASP/SaaS
といった提供側の言葉ではなく、カテゴリ毎に存在する業務場面を一つ一つ丁寧
に尋ねていくことが、アプリケーション形態の将来像を探る上では欠かせない」
と感じました。


この点については今後発刊予定の調査レポートなどで取り組んでいきたいと考えています。