ゆーたんのつぶやき

株式会社ノークリサーチにてIT関連のシニアアナリストとして活動しています。

ZDNet取材記事:災害対策としての情報共有



ZDNet Japanにて
「災害時だけでなく日常業務でも効果をもたらす情報共有
 --3つのポイント」
というタイトルで取材いただいた記事が掲載されています。
http://japan.zdnet.com/communication/analysis/35005207/


口頭ではお伝えしきれなかった部分もありますので、
以下に整理して記載させていただければと思います。


東日本大震災では広範囲に渡って交通機関がマヒし、
多くの企業が社員の所在/安否確認に追われました。


携帯電話が通じない中、Twitterなどインターネット
を活用したツールは利用が可能だったため、災害時に
おける安否確認手段としてこれらを利用する機運が
高まるのではないかという見解もあります。


ですが、実際に調査をしてみると、「東日本大震災
を機に新たに実施/検討もしくは関心を抱いた項目」
中で「Twitterなどのソーシャルサービスを活用した
連絡手段を確保しておく」という回答は3〜10%程度
に留まっています。
※下記リリースの4ページ目参照
http://www.norkresearch.co.jp/pdf/2011QRsp2_rel.pdf


「災害時に本当に使えるツール」であるためには
「社員が日頃から使い慣れていること」が重要と
なります。社員が既に個人レベルで利用している
ツールであれば良いのですが、そうでない場合は
「アカウントだけ作っても、いざという時に使い方
がわからないといった事態になるのでは」といった
中堅・中小企業からの意見も少なくありません。


では、日頃から使い慣れているグループウェアなど
を使うのはどうか?ということになります。
中堅・中小企業で導入されているグループウェア
多くは社外からアクセスでき、携帯電話からも利用
できる仕組みを備えています。既にこれらの仕組み
を活用している場合には有効な選択肢といえます。


ですが、災害対策のためだけに社外からアクセス
できる仕組みを整えるとなると、コスト面の問題
が大きくなります。実際、災害対策関連のIT投資
に際しては「災害時のみならず、通常業務におい
ても業務改善やコスト削減の効果を得るように
したい」と考える中堅・中小企業は全体の42.9%に
達しています。
※下記リリースの3ページ目参照
http://www.norkresearch.co.jp/pdf/2011QRsp2_rel.pdf


そこで注目したいのが、基幹系/情報系/運用管理系
といった区分のいずれにも当てはまらない「独自の
簡易アプリ」ともいえる分野です。


中堅・中小企業では問い合わせ/クレーム管理、社内外
のプロジェクト管理、販促活動時のリスト管理などなど
ちょっとした業務/データの管理が必要な時に、Excel
Accessを使って情報共有を行ってきました。


ですが、こうした方法では効率的な情報共有や過去を
遡った状況の把握/分析という点で業務効率を逆に低下
させてしまうこともあります。
こうした状況を踏まえて、FileMakerやデヂエといった
「ユーザ自身が独自に簡易アプリを作成できるツール」
が登場してきました。これらはWeb化されておりデータ
を保存/共有/検索できるため、より効率的な業務管理が
可能です。


少人数の中小企業よりも少し規模の大きい中堅企業では
Lotus Notes/Dominoの独自データベースがこうした役割
を担っていました。昨今ではLotus Notes/Dominoからの
移行ニーズもあり、「独自簡易アプリ」ニーズの受け皿
としては「グループウェア製品+独自データベース製品/
オプション」という組み合わせが登場してきています。
サイボウズ Office/ガルーン+デヂエ」
「desknet's + desknet'sDB」
「Insuite Enterprise + ひびきSm@rtDB」


こうした「独自簡易アプリ」は比較的利用頻度の高い
グループウェアと併用されながら、日常業務での効率
改善を目的に社員が利用するものとなります。各部署
の業務に密着したものであれば、携帯などで社外から
利用したいというニーズも自然と出てきますし、それ
に要するコストも日常に効果が期待できる業務改善と
いう位置付けで捻出しやすくなります。


この「独自簡易アプリ」で災害時の所在/安否確認も
カバーできるのではないかと考えています。


災害時の所在/安否確認に有効で、かつ中堅・中小企業
にとって現実的なツールは
・全社員が日頃から利用し、使い慣れている
・携帯電話などを使って社外からも利用できる
・日常業務においても効果が期待できる
といった条件を満たす必要があります。


「独自簡易アプリ」の活用では
 『無理に全社員に単一のツールを提供するのではなく、
  業務改善の一環として部署単位で安否確認のツール
  を作成する』
という点がポイントとなります。部署単位という視点で
ある種の部分最適的な発想を入れることで、「日常業務
における効果」と「全社員が日頃から利用する」という
点をクリアするわけです。


「それでは全社的な社員の所在/安否確認にならないのでは?」
という指摘があるかも知れませんが、実際問題として災害時に
確認すべき社員の状況は部署によって異なる可能性もあります。


営業であれば「顧客との連絡手段が確保できているか?」
という視点が重要です。情報システムの担当/部門であれば
オフィスやDCへ出向くことができるか?が重要となります。
こうした部署毎に異なる安否確認の仕組みを各部署で日頃
から利用している「独自簡易アプリ」の一つとして作って
おけば、いざという時に的確な情報収集ができます。


平文で状況を書かせるのではなく、明示的な項目を備えた
入力フォームを作ることが、漏れのない情報共有では大切
です。全社的な情報集約については、幹部社員が経営情報
などを共有する掲示板(これ自体も「独自管理アプリ」で
作成可能)に集約する形となります。


日常の業務改善と災害時の対応を無理なく両立させる手段の
一つとして、こうした「独自簡易アプリ」の活用を検討して
みる価値があるのではないかと考えています。


ご参考になりましたら幸いです。