ゆーたんのつぶやき

株式会社ノークリサーチにてIT関連のシニアアナリストとして活動しています。

有害サイト規制法とWeb2.0



表現の自由への行政介入ではないかと
いうことで議論の的になっている同法
ですが、実際に適用される場面を想定
するといろいろな疑問が沸いてきます。


第21条には「特定サーバー管理者は、
その管理する特定サーバーを利用して
他人により青少年有害情報の発信が
行われたことを知ったとき...<中略>
...インターネットを利用して青少年
による閲覧ができないようにするための
措置をとるよう努めなければならない。」
といった記述があります。


ここでの「特定サーバー管理者」が誰なのか?
が明確でないケースが出てくるように感じます。
例えば、
APIを介して他サイトからコンテンツを取得
 して表示している場合、そのコンテンツの
 「特定サーバー」は何処を指すのか?
・AmazonEC2/S3といったクラウド基盤上で
 運用されるサイトの場合、「特定サーバー」
 はクラウド基盤そのものを指すのか?
 それともその上で動作するアプリケーション
 を指すのか?
といったようなことです。


そもそも「サーバー」とは物理サーバーを指すのか、
それともコンテンツを提供するミドルウェアやアプリ
ケーションのことを指すのか?によって適用範囲が
だいぶ変わってきます。


ともすると、SNSでのコミュニティ管理者が
自身の管理しているコミュニティ内で書かれた
コンテンツについて責任を負ったり、個人の
ブログに打たれた不正なトラックバックがブログ
開設者の管理責任範疇になるといった拡大解釈
も成り立ってしまうかも知れません。


結局のところ、同法で想定しているのは昔ながらの
固定物理サーバー上に単体の事業主体がコンテンツ
をホストするパターンのようです。Web2.0になって
登場してきた様々なコンテンツ提供形態までは考慮
されていないのではないかという気がします。


有害サイトや有害なコンテンツに対しては何らかの
施策を打つべきなのは確かですが、ユーザに有益な
手法が抑制される一方で有害なものが抜け道を通る
といったことがないよう、慎重に取り組んでほしい
と思います。